隠密薬剤師書置

日陰に咲く隠密薬剤師の留守居録

医療非常事態宣言

大阪府が「医療非常事態宣言」を出す予定なのだそうですが。
まあ、末端の医療機関では、できることをひとつずつ真面目にやるだけなのですけど。
自分のような泡沫書き手があれこれ言ってもあまり意味ないかなあとは思いますが、自分の見ている光景についてひとつふたつ(だけで済まない多分)。

大阪の新型コロナ感染確認者数が東京の数値を抜き始めて少し経ちますが、終息し切る前に飛沫感染を助長するような行動を再び始める人達が散見され、もうみんな細かいことに気配りすることに疲れてしまったんだろうなあと思います。

新型コロナ感染症にかかるのは高齢者だけじゃない。
若年者だから軽く済むとは限らない。
自分で運転して受診に来た人が、診察や検査している間にみるみる容態悪化して、数時間後には挿管されて中等症重症対応施設に送られてしまったり。
解熱して感染扱い解除になっても、味覚が戻らなくなった飲食店主、思うように声が出なくなったアーチスト、以前と同じようには仕事もできなくなったり。

勤務先で陽性患者が出たため濃厚接触者ではないが念のために検査をして陰性だったので安心していたら、2日後に発熱して受診・検査したら陽性だった、最初の念のための検査をすり抜けてしまっていた事例とか。
陰性が出たからと安心して遊びに行って、あちこちで感染広めてたらどうするんだろう、と。

無差別に無症状者の検査をしても、発症前から感染力がある感染症では検査して見つかった段階で既に何人もの人にうつしてしまっているので、見つかってから隔離するのでは効率が悪過ぎる。
それに「無差別検査」で見つかった陽性者を片っ端から隔離していくやり方は、数日から2週間ぐらいの間隔で検査を繰り返していかないとやる意味ないのではないかと思います。

これを大都市の感染拡大地域でガチでやろうとしたら、現状ではたぶん、医療機関や検査機関が死にます。
全国民に毎日検査する程の余裕があるわけではない以上は、症状のある人、濃厚接触者、その他高リスク群を優先して検査し感染者を囲い込む方が圧倒的に効率が良いと思われます。

職場でPCR検査やってるからわかるのですが、一定の精度で検査をやろうと思ったら、検体採取だけを取ってみても、管理が大変なわけですよ。検体の質の管理とか、採取頻度とか。
専用の綿棒を使う採取法、あれ余りに痛過ぎて綿棒突っ込まれた鼻の穴側の、目の下から火花出そうなぐらいの痛さです。

あと、それなりの精度が期待できる検査はコストがかかります。
先日、いわゆる「野良検査」(医師の診察や医療へのアクセスを伴わない簡易検査)で、検体をきちんと検査せず全部「陰性」として結果報告していた、という事案がありましたね。

食中毒予防の原則に食中毒の原因菌を「つけない・ふやさない・へらす」というのがありますが、ウイルスによる感染症予防も「つけない(あちこち触った手で顔や口をさわらない)・ふやさない(ウイルスを体に入れない、飛沫を撒き散らさないようマスク着用)・へらす(うがい・手洗い・アルコール消毒)」ということが言えるのではないかと思います。

守秘義務云々言われて具体的な話は書きにくいのでブログも書かずにいましたが、緊急事態宣言明け以降、それ以前よりも50歳代以下の感染者が目立つなあという印象があるので、若いから大丈夫とは思わずに、うがい手洗い消毒の励行、飛沫を撒き散らさないためにマスクの着用、そして狭い空間で多人数が長時間マスクなしで食べたりしゃべったり歌ったりするイベントは、感染予防の観点から今しばらくお控えいただきますようお願いいたします。