隠密薬剤師書置

日陰に咲く隠密薬剤師の留守居録

新型コロナの分類が5類に移行するわけですが

5月に入って、テレビが「マスク外せて快適~」「フェスで大声で発散できてサイコー」みたいな映像を次々と流し始め、そんな一度にワーッと両手を離すようなことして大丈夫か?と思っているわけですが、5類にしたら対応もインフルエンザと同じ(かそれより緩く)でいいと思っているえらい人達が決めたのなら、まあそれでいっぺんやってみはったらよろしいのと違いますか(知らんけど)というのが正直なところ。

 

別にウイルスが消滅したわけでも感染力が弱まったわけでもないので(但し、罹患やワクチンで免疫付いてる人が多少増えたのと、感染予防対策のキモを押さえた行動ができる人が増えたとので、7波8波よりは抑えられそうというのはあると思う)、「インフルエンザ並み」に症状出て社会生活から一時離脱する人は一定数出続けると思うし、発症前潜伏期から感染力があるという特性上、医療機関感染症対応が新型コロナが発生する前のレベルに(緩く)戻ることはおそらくないと思われます。

 

弊社は新型コロナが出る以前、2018-19シーズンには既に、発熱のある人は患者動線が分けられていましたので、多数の人が想像しているのではないかと思われる「どこでも診てもらえる=高血圧や糖尿病で受診する人の間に熱が出て咳してる人が座って待っている」昭和の町医者で見られたような絵面は、もう戻ってこないと思っていただいた方がいいのではないでしょうか。

 

少なくとも、時間や場所、受診の手続きのどれかに何らかの制限や指定をさせていただく、ということになると思います。とりあえず、弊社はそうです。

 

なんか、世間ではもう「終息」したような空気感出してますけれども、あの、万博とカジノ開業に向けて浮かれてるはずの当地自治体が、8日以降も変わらず高齢者施設の従業員には毎日の検温を義務付け、週2回指定の日に出勤者全員抗原検査を実施し、その結果も従来どおり役所に報告するようにと以前と変わらないペースで検査キットを送って来てますし、何なら今後は医療機関での検査が公費利かなくなるので、利用者入所前のスクリーニングに使えとその分も上乗せで数入ってます。もう誰か感染するのはたぶん止められないけど、できるだけ事前に食い止めてもらいたいという気持ちは伝わってます。

 

・・・誰が入れ知恵したのか知らんけど、なかなかやるやないか。

(素直に誉めています)

 

というか、弊社の診療圏内ではすでにこの時期、入院時スクリーニングをすり抜けて別疾患での入院2日後に発症・陽性確認された患者を初発として、その同室(大部屋)患者、近い部屋の患者、職員にも飛び火し10名以上のクラスターになってる病院があり、以前のように救急受け入れ停止とまではいきませんが当該病棟へ/からの入退院はちょっと面倒なことになっているようです。

(リハビリ目的での患者さんのご紹介がピタッと止まったので、理由を聞いたらそういうことでした)

 

これは経験したので書くんですけど、報道等で「個室管理すれば普通の病室でも(入院で)診られる」という話が流れて、何か一般の病棟でも普通の疾患での入院患者と混ぜて構わないみたいな解釈をする人がいるんですが、あれ、陽性部屋と普通の部屋を飛び飛びにして混ぜてしまうと、陽性部屋に挟まれた間の部屋は余程上手くやらないとオセロの駒がひっくり返るように次々と陽性化します。

 

弊社、7波の時にそれで失敗してますので。何だかんだ言って陽性の人、軽症だと部屋の外へ出てしまうし、感染していない方の人にも外には出ないように言ってあったとしても、ゾーニングせず室内管理のみだと部屋の外はいきなりグリーンゾーン(清浄区域)なので、そこに陽性者がウロウロしたら・・・あとはわかりますね?

 

初動を誤ったら、もうその場合はその棟ごと、あるいは陽性者のいる部屋と同じ廊下に面する並びの部屋はまとめて濃厚接触疑い扱いで感染部屋対応するしかないという。

 

今後は陽性だからというだけで入院するということはなくなるでしょうが(たぶんすでに7波以降はほぼない)、入院中に大部屋で新入院者から感染するということは大いにあり得ますので、ゾーニング大事という話は今後も言い続けていきたいと思います。

 

(個人的な感想ですが、発症・検査日を0日として6日目から出勤可っていうやつ、医療機関や高齢者施設に関してはあと2日ぐらい延ばしてもいいんじゃないかと思っているんです。感染力がなくなるのがο株で「平均」発症後5日というのが根拠なのだろうと思うのですが、個人差が大きいようなので、感染拡大した場合リスクの大きい事業所はもう少し慎重でもよいのでは?と。そうでなくても「熱下がったら出てこい」と言われかねない職種ですしね。まあ、いっぺんやってみて5日じゃ短いとなったら考え直すかも知れません。当然ですが、6日以上経っていても症状の酷い人を無理矢理に出勤させるのはダメですよ・・・)

 

このゴールデンウィーク中、いろんな医療系アルファツイッタラーの方々が「積極的な(新型コロナ関連の)情報発信は今週まで」とツイートされていて、これに対してもうギブアップかみたいな揚げ足取りのリプライが付いてたりするのですが、

 

「もう3年も情報提供してきたのだから、国も言ってることだしそろそろ『自分自身で判断してください』」

 

ということなんだと思います。

 

そして、「自分自身で判断する」は「TPO考えず自分の好きなようにしてよい」「自分の基準に皆が合わせてくれる」ではない、ということです。

 

もう、みなまで言わないので。

どうぞ皆様、ご安全に。

陥落。(チラシの裏に書く話)

7月某日、話題のアレに罹りました。


職場で再びクラスターが発生して、今回は自分が主に業務を行っている方の療養棟が初発だったので、飛び火するのは時間の問題だと思っていたのですが、まさかこんなに早く自分が罹るとは思っていなかった。


検査にも間違いがあるとか、何もないものを拾って陽性にしている、などと仰る方が時々ありますが、抗原定性やPCRと違い「抗原定量」は具体的な数値が出てきますので、誤魔化しようがないですね。
クロです。


感染源はたぶんこれというのはわかっていて、発症前ノーマスク患者と近距離で一定時間接触したこと。その人と近距離接触した職員が、その人の発症直後から相次いで発症したので、後日職務上感染と認定され、欠勤も有給休暇とは別の特別休暇として処理されました。
発症前から感染力がある、というのを実感しました。


この感染症は、無症状から死に至る人まで、症状の触れ幅が激しいので「私の場合は~」的な体験談や経過記録を出してしまうと、それを読む人の元の考え方や周辺環境によって情報が切り取られて、更に恐がらせてしまったり、逆に軽くみられたりして、意図するものとは違う解釈をされる可能性があるので、それは敢えてやりません。
(残念ながら、無症状ではありませんでした)


「民でできることは民で」がモットーの自治体住民ですので、できるだけ公助に頼らないよう(全く頼らなかったとは言っていない。保健所や地域保健センターの皆様ありがとうございました)、いろんな準備もしましたし、医療関係者の末端にいる者としてそれなりの知識やアイテムも駆使しましたが、何せ相手は感染症、こちらのお気持ちや気合いなどにはお構いなく人間社会の資源や時間を奪っていきます。


拙宅は家族隔離が割とうまくいったので、自分以外の家族は濃厚接触者としての自粛期間を最短で済ませることができましたが、それでも配偶者の職場には欠勤で迷惑をかけ、子供も大学の試験の一部が受けられない(これは申請して追試験を受けさせてもらえることになった)など、それなりに影響がありました。


特に家庭内でいわゆる「主ふ業務」を主に担う属性の者としては、その働きができない、機能しない、そればかりか家族に負担をかけるとなったらこれはもう役立たずを越えて「お荷物」でしかない。


(その上、間の悪いことにこの時期に実母が入院してしまい、そちら方面のお世話も弟や従兄などの親族に丸投げ状態と、二重三重の役立たず…)


職場から戦線離脱することについてはさらに罪悪感満載です。
自分が療養場所内蟄居してウイルスを外に出さない、広げないのが一番の感染対策とはわかっていても「そもそも感染対策委員が感染するとは何事」「ひとり職種なので不在のあいだはその業務がほぼ完全ストップ(必要最低限は一時的に外注等で処理可能だが余分なコストがかかる)」という責任の重さ。


(自分が離脱している期間中に、弊社内思ったほど陽性者が増えなかったのが唯一救われた話)


自分の存在意義を自問自答させられる、割と由々しき事態であります。
「あーあ、これ自分が専業主婦でずっと家にいたのなら、扉1枚隔てたところに陽性者がいるような環境で何時間も作業してウイルス拾ってくることもなかっただろうにな…」と、やってもしょうがないたらればの話になってしまいます。


政治家をはじめとする世間の皆様は「濃厚接触者の自粛期間を短くすればなんとなく、医療従事者の手も確保できて経済活動をはじめ世の中ちゃんと回る」気分でいらっしゃるのかも知れませんが、医療従事者も罹るんですよ。
罹ってしまったら、お気持ちや根性でどうにかなるものではありません。


特に今回のこれは、自分の体感でしかありませんが感染力がハンパない。
弊社でも、それまでは直接陽性者のお世話をする者以外は不織布マスク着用のみだったのをコメディカルN95マスクを使用するよう配布されましたが、自分の場合はその時すでに潜伏期間に入っていたのではないかと思われます。


そして、罹ったら、1日や2日では治らないし社会活動には戻れない。
そしてさらに、初動を誤ると他に感染させて被害を広げるというおまけ付きです。


今盛んに、政治家や経済団体が主体となって「濃厚接触者の待機期間を短縮する」「療養期間を最小限にする」流れが出来つつありますが。


それは良いんですよ。
感染していないことが確実、であれば。


以前「自宅待機なんて退屈でしかないから症状なければ普段どおり活動させろ」という趣旨の発言をされた政治家さんがいらっしゃいましたが、発症前から感染力のある感染症でそれ言います?と真顔になったことがありましてですね。


あの手のオジサン達(申し訳ないがオバサンは今のところ目にしていないので男ばっかり悪者にするのは如何なものかという苦情は受け付けない)がこの話をする時って「何も問題ない健康な者が自粛を強いられ活動を制限される」前提なんですが、「熱が出て検査したら陰性だったので、熱も引き安心して外に出たら翌日再び発熱して今度は陽性」みたいな残念事例を少なからず目にする医療側としては「その中の一定割合が濃厚接触者から陽性になり、活動制限していなかった場合ウイルスを撒いて回ってしまう」というのが、発症前から感染力がある、このウイルスのめんどくさいところです。


重症化しなければいいとかそういう話ではなく、感染者数そのものを減らさないと、感染者の多くは何らかの症状が出て少なくとも数日は日常生活に支障をきたすので、日常の経済活動を回してくれる人が少なくなります。


(仮に別の世界線があって「症状があっても出歩いて構わない」ということになったとしても、熱でしんどいのに嬉々として遊びに行く人そんなにいないと思うのですよ)


これまた政治家や経済界のエライヒトがよく「○○(という属性)の人に△△してもらえば、□□の基準を変えれば、解決するのではないか」という、安全な場所から極めて他人事みたいな物言いで解決策?を提言したりしますが、○○という属性の人も家に帰れば家庭の一構成員であり、あなたが「経済を回してもらおう」と考えている社会の一員なのです。


○○という属性の人だけが頑張れば、他の人は何の気兼ねも配慮も要らず面白おかしく暮らせる、というわけにはいかないのですよ。
我慢や配慮を一切したくない人達が、何とかして面倒なことから逃げ切るためにどこか特定のところに負担をかけたり判断基準を甘くしたりして元のイケイケドンドンな日常を再び!と思っているんだろうなあ…


こちらとしても、何でも念のためで大袈裟に対応して日常生活の自由度が下がるようなことは望んではいませんが、統計や科学的根拠をねじ曲げてまで「ラクに楽しく」を優先させるのは何卒厳にお控えいただきたく。


・・・そのうち「無症状・軽症なら陽性でも働いたり活動して良い職種・業態を検討する」とか言い出しても驚かないぞ。

ある介護老人保健施設における新型コロナ感染症クラスター対応の非公式ざっくり記録

いわゆる「まん防(まん延防止等重点措置)」が解除され、新年度が始まり、政府が「ワクワクイベント」などとまた新たな何かを誘導しそうな事業を思い付いたようですが(反対はしていません。適切に運用されることを期待します)、皆様いかがお過ごしでしょうか。


新型コロナ感染症クラスター対応をやってみた。(※現在進行形)
https://penguin-the-pharmacist.hatenablog.com/entry/2022/02/13/033015


上記のエントリーを投稿してから2ヵ月近く経ち、「まん防」解除後にも関わらず弊社弊支店近隣の医療機関や高齢者施設では新たな新型コロナ感染症クラスターが発生しておりますが、わたくしの勤務する部門ではひとまずクラスター対応が一区切りつきましたので、これまた備忘録として思い付くまま書き残しておきたいと思います。


【1】油断した頃に新たな波がやって来る


数日から1週間程度、新規発生がないと、現場は

「これはワンチャン、逃げ切れるかも」

と、感染対応解除に向けていろんなことを少しずつ平常時基準に緩めようとします。
特に、日々発表される国内の感染者数がピークを過ぎて減り始めると、マスコミも含めて「ピークアウトした」という空気感が醸成されるということもあって

「ウチらも、もう大丈夫なんとちゃうか」

と、気が大きくなります。

世間がどうであろうと、ウイルスはヒトのお気持ちなど忖度してはくれず、感染はある程度「対策した通りに」拡大したり沈静化したりしますので、果たして数日新規発生がなかったのに、これまで無事だった部屋から同時に複数人の発熱者が出て、検査してみたら皆新型コロナ陽性で、感染対応がまた振り出しに戻るー

これを3度繰り返しました。

最後の1回が最も残念感が半端なかったというのが、今回の弊支店の場合は対象が要介護の高齢者であること、感染対応期間終了時の検査をしないことから感染対応期間を発症翌日から2週間取っているのですが、「最終発症から2週間以上経ったので今日から平常運営に戻します」というアナウンスをして什器の配置や様々なものを元に戻した次の日に、また新たな発症者が複数出て、この時はもうスタッフ皆が膝から崩れ落ちる勢いで「あああぁぁぁ…」と落胆したのでした…

これに懲りて、最後の感染対応解除の際には、感染対応が終わってフロア(食堂兼共用談話スペース)に出ていただいて良い対象(未罹患者を含む)を最後の感染部屋から遠い順に3段階1週間ぐらいかけて元に戻しました。
結果的に最後のクラスターは解除に約3週間かけたことになります。

本当は、3週間はちょっと慎重過ぎやしないかとも思ったのですが、この最後のクラスターは、今回の集団感染発生当初、感染者が一度に複数発生してもフロアに多人数集めての食事提供を止めず感染を広げ、職員も狭い休憩室で何人も集まって1つのテーブルを囲みキャッキャはしゃぎながらお昼ごはん食べてて半分が罹患したという方の棟で、さすがにもう同じ轍は踏まないということで自主的により慎重な方策を取ってくれるようになったので、それを尊重することにいたしました。


【2】患者さんに「見捨てられた感」を与えない


今回の弊支店高齢者施設の患者さんで、必要な医療を受けられず「施設内」でそのまま亡くなられた方はないのですが、転医先で亡くなられた方は複数おられます。

また、罹患後10日や2週間経って「他に感染させるおそれなし」で戻って来られた方で、コロナ肺炎等の症状は軽減したものの、罹患前より大幅に身体機能が低下し食事も取れなくなって衰弱し、最終的に死亡の転帰をたどった方も複数いらっしゃいます。

「寿命じゃないのか」と仰る向きもあるかとは思うのですが、例年の死亡退所数と比べると明らかにこの期間中は数が多いので、「新型コロナに罹らなければもう少し長くお元気でいられた」可能性は低いとは言えないと考えています。

世間(特にネット上)では「後期高齢者はもう寿命だと思って(積極治療はしなくても良いのではないか、諦めろ)」などという意見を出される方もあったように思います。

それは「自分の知らない、どっかの年寄り」だから言えるのか、それを言う人ご自身がお身内の高齢者と関係が良くなくて特に高齢者に思い入れがないから言えるのかも知れませんが、当のご家族にとってはそれまでの関係や積み重ねてきた家族としての歴史がある「うちのおじいちゃん・おばあちゃん」だったりするわけです。

クラスター発生当初、ご家族の方々からは

「早く病院へ入院させて治療してください」
「このまま見殺しにする気ですか」
「そちらで感染させられたんですからね、責任は取ってもらいます」

等々、厳しい言葉が複数浴びせられました。

発熱・咳・咽頭痛程度の軽症例は施設内療養、中等症以上は弊支店の病院の方や府の入院フォローアップセンターの紹介で引き受けてもらうことができたのですが、入院先で亡くなられた方について、入院前は施設の方にクレームというか厳しいことを言っていたご家族さんでも

「ちゃんと病院で最期まで看ていただいてありがとうございます」

後日、施設の方にも

「病床不足の中、病院へ入れていただいてありがとうございました」

とお礼の言葉があったようです。

弊支店病院の感染対策担当医の先生が仰るには

「最後の1~2日だけでも病院で看たら『最後まで手を尽くしてもらえた』と納得されるんやろな」

ということらしいです。

これは「適切な設備と有資格者が適切に配置されている環境で療養できたか」という話で、「特養等に往診医を派遣」といったピンポイント対応では一般の方には「やっつけ仕事」程度にしか受け取ってもらえない、ということでもあって。

日本は、普段から比較的少ない経済的負担で医療にアクセスできるので、このあたりの敷居がとても低いというか、医療資源は「いつでもどこでも誰でも」得られるのが当然で、それが満たされないと「見捨てられた」気がするということなのかなあと思います。


【3】「最悪の場合死に至る」率がインフルエンザの比ではない(※当社比)


わたくし、この仕事やってて介護保険制度が始まってからでもそこそこの年数経ってるんですけど、弊支店の施設の方に入られた方でインフルエンザが原因の肺炎で亡くなった方って見たことないんですね。他ではあるんだと思いますし全国的な統計では出てきますけれども。
自分的にはインフルエンザは割と可逆的に治る印象で、何年か前に弊支店で施設内流行起こして保健所案件になった時でさえも死亡例はなかったのです。

それが、今回これですので。
ただの風邪どころかインフルエンザよりタチが悪い。
可逆的に回復しない事例を、50代以下の若年(といっていいかどうかはさておき)層でも見ています。

「罹っても治せばいい」

と簡単に考えないで欲しいです。

例えばの話、水痘(みずぼうそう)でも、昔に罹ったことがあると高齢になってから帯状疱疹を発症したりします。わたくしはなったことないんですけど聞いた話では結構痛いらしい。

感染症でも何でも、罹らないのが一番なのではと思います。


【4】現場以外の後方支援


感染対応期間中、直接患者ケアに関わる看護・介護のスタッフは、他の職員と動線を分けるため病院の ICTより病院と共用の職員更衣室・社員食堂の利用を禁止されていたので、各棟療養室をそれぞれ2部屋潰して更衣室を作り、家から昼食を準備して来られない人には社食で弁当を作ってもらう(有料)手配をすることになりました。

(施設を設計する時に、無駄なスペースを作らず床面積を有効利用したいのはわかるのですが、何にでも転用できる個室ぐらいの広さの部屋を複数用意しておいた方が良いのではと思いました。届出床数満床で運用してしまうと、今回のように感染症が発生した場合に隔離したり前室として使える場所がありません)

更衣場所を変更したことで、クリーニング業者の納品も新たな動線を考えて依頼することになりました。

物品は、潤沢というわけにはいきませんでしたが、事務次長の買い出しと、資材担当のお姉さんが頑張ってかき集めたのと、罹患者を施設内で看るということで府の方からN95マスク等配給があったので(但し自分達で車を出して直接取りに行く必要がある)、そこそこ何とかなりました。

清掃業者も、感染対応は契約外業務となるので解除になるまでは入れませんでした。
その期間中は看護/介護職員が自分達で清掃するわけですが、これが思いの外(すまぬ)綺麗で、何なら業者さんがやるより綺麗だったのではないだろうか。
感染対応解除になった日に当該棟に入ったのですが、荒れた感じは全然なくて、ベッドや什器等の配置さえ元に戻せば全く以前の環境と同じという状態でした。
頑張ったな!


【5】情報管理


現場はとにかく余裕がないので、情報がとっ散らかります。
施設内全体の罹患状況、どこの部屋に何人罹患者がいるか、発症/陽性確認からの日数、重症度、部屋移動の履歴、同室者等濃厚接触者の管理等々、一目見てわかるような状態にしておくのが望ましいという話を以前外部の研修で言われていたので、ホワイトボードを使って一元管理できるようにし、保健所や弊社本社等外部からの問い合わせ等にすぐ答えられるように対策本部(!)の事務所に設置しました。

本当は、これと同じものをそれぞれの療養棟に、スタッフが出勤したらまず見る場所に置きたかったのですが、一方の療養棟は丸ごとレッドゾーンでわたくしは原則出入りを禁じられ日々の更新を自分の手で行うことができないので、部分レッドで全体イエローな方の棟にある事務所に置くことになったものです。

他にも、職員も含めて罹患者のデータベースを作り(元々は保健所から報告の指示があったのでその元資料として作り始めた)、発症/陽性確認日、ワクチン接種回数、簡単な経過など記録していったものが、総務人事による罹患職員の復帰日や検査日の管理、休業手当の手続き等にも役立ったようです。

看護部長/総看護師長が罹患者の情報管理をされる施設も多いかとは思いますが、看護管理者は現場対応もあって多忙なので、それを客観的に見られる形にするのは秘書さんか誰か別に担当者を置いた方が作業が捗ると思います。
弊社弊支店は、感染対策委員会の「お世話係」であったわたくしがその役目を担うことにしました。

余談ですが、どこの病院や施設もいろんな委員会を設置して活動するように監督官庁から言われていると思うのですが、往々にして「人手が取られる」のを嫌い、まとめ役や主要メンバーをコメディカルや事務職員にやらせていることがあると思います。

その例に漏れず、弊支店も感染対策委員会の委員長(お世話係)をわたくしが任命されていたのですが、わたくしコメディカルですので看護/介護の命令系統の中に入れず、何か決まりごとを伝達するにしても指示命令ではなく「お願い」ベースでしかできないため、現場の方々が「あいつ何言うとんねん」としか認識してくださらないことが多々あり、結果的に今回斯様なことになってしまいました。

なので、本年度からは現場にベッドコントロールを含む指示命令のできる人(看護職)を委員長として置き、わたくしは事務局担当として後方支援にあたるという案を受け入れてもらいました。

いくら机上で、理屈でシミュレーションしても、実際に組織を動かせないと意味がないのですよ。
次があって欲しくはないのですが、次に同様の事態が発生したら、多分今回よりは上手く立ち回れるはずです。(←希望)

あと、第1波第2波の頃と違い、クラスター発生した施設がマスコミに張り込まれたり記者会見で吊し上げられるということはほぼなくなりましたが、もしも何かマスコミ案件になった場合に、対応する方(多分だいたいは事務長的ポジションの方)を決めておかれた方が良いのではという話。
他の職員さんは個人的に取材を受けたりしないように。
法人本部など代表してくれる部門があればなお良しです。


【6】最後に


具体的な感染対応(ゾーニングやケアの内容その他)については、既に公的機関や名前の通った先生方が出しておられるものがあると思いますので、弊支店で実施したことについては改めてここでは書きません。やらかしてることも結構あるでしょうし、手本にはならないと思いますので…

もし「こんな時はどうしたか」という弊支店一施設の実例をお知りになりたい方がいらっしゃいましたら、こちらのコメント欄にでもTwitterの方にでもその旨お知らせいただければと思います。

但し、個人情報保護・リアバレ防止の観点から、お答えできない場合もあることを予めご了承ください。


みんな、本当にお疲れ様だったね…
当分、以前のようにお疲れ様会やったりする日はこないと思うけど、今後も心折らずに頑張ってまいりましょう…

【新型コロナ】クラスター制圧顛末記

第1~5波まではどうにか逃げ切ったものの、感染力の強い「ο(オミクロン)株」には勝てず、勤務先で感染者クラスターが発生しました。
個人的な感想&備忘録として、簡単にまとめます。特定を避けるため、数字には幅を持たせたり、名称は仮名を使ったりします。


【施設種類】介護老人保健施設(病院併設型)
通所リハビリ併設
【入所定員】100名以上200名以下規模(特定避けのため概数)
A棟(下階)B棟(上階)の2フロア
【医療圏】大阪府南部(大和川以南)


【1日目】

午後の検温で、A棟入所者の約1/5に発熱がみられる。
以前から急な発熱者にやっているとおりに、併設病院に連絡し発熱者全員の新型コロナ抗原定量PCR検査をオーダー。
約半数が新型コロナ陽性と判明。

(ここで、日曜で管理職が不在であったこともあり、発熱者多数の報告は看護師長に電話で伝えられ検査依頼等の指示はあったものの、当日の日勤リーダー看護師と介護主任の判断で、ICTや看護師長に相談ないままに複数陽性者が出た部屋を感染部屋として有熱者を集め、元々そこにいた無症状者を空いた部屋へ移動させてしまうという痛恨の初動ミス。夕方に看護師長が駆けつけた時には部屋移動は完了してしまっていた)


【2日目】

昨日陽性が確認された以外のA棟入所者全員の抗原定量検査。被検者の約1/7が陽性。
本来であれば、高齢で重症化リスクの高い高齢の陽性患者は医療機関での治療を受けることが望ましいが、併設病院含めて診療圏内にはそんな余剰ベッドはない。
第6波初期の頃は軽症者でも入院できる程度に多少のゆとりがみられることもあったようだが、一部マスコミやSNSなどで言われていた「軽症者も全員入院などという運用をしているから病床が足りなくなるのではないか」というのは完全に周回遅れで、既に一般の軽症者は自宅療養がデフォルトとなっている。
ということで、医療従事者基準での「軽症者」は転院治療させることを諦め、自施設内で療養継続という覚悟を決める。
職員の一部に「夜勤明けの夜から熱っぽい」等申し出る者もいて、A棟スタッフとA棟に出入りするリハビリ職員等を全員検査。その後発症した者も含めて、A棟に関わるスタッフの約半分が陽性。


【3日目】

看護師全員勤務実績と予定を確認したところ、B棟所属の看護師1人が、陽性者発生確認の前日に日勤でA棟の業務応援に入っていたことが確認される。
発生当日の公休日を挟んで発生2日目の昨日は本来所属のB棟で勤務し、本日になって発熱等の症状がみられ検査したところ抗原定量にて陽性確認。
B棟勤務に戻った翌日に当たり、今ここでB棟入所者全員を検査しても正しい結果は出ないであろうという判断で、本日のB棟全員検査は後日に見送り。
B棟のスタッフで陽性となったのはこの看護師のみ。
ここからA棟入所者で日々確認される陽性者の数は1日1~4名となり、2日連続0名の時もあった。

通所リハビリは当分の間サービス提供を中止(一時閉鎖)することも考えたが、入浴等最低限必要な生活行動を通所サービスに依存している利用者もいるため、代替サービスが受けられない人に限定して1日数人以内の利用を受け付けることに。


【7日目】

B棟で初の陽性者確認。
A棟は初動を誤ったために感染者が棟内あちこちに散らばり、ICTにより棟内全体レッドゾーン認定されたので、B棟は同じ轍を踏まないために陽性者の出た多床室は部屋ごとレッドゾーンとし、同室の方は陰性でも濃厚接触者としてカーテン隔離で部屋から出さない、多床室2部屋以上で陽性者が出て一方の陽性者ともう一方の濃厚接触者を入れ替え一室を完全な感染部屋、濃厚接触者部屋にできる場合のみ入所者の部屋替えを許可することとする。


【9日目】

ここまでで陽性入所者の1割強が中等症。
併設病院にもコロナ対応病床はあるが府のフォローアップセンターからの依頼患者も受けており、府に届け出たコロナ対応病床数をとっくにオーバーしていて、肺炎症状のある中等症の人は受けてもらえたものの、当施設からの患者をこれ以上受けることは不可能。
フォローアップセンターや保健所に何度も電話をかけ、ようやく繋がったところで入院調整をお願いするも「施設内で酸素投与や点滴ができるのであれば、もうしばらく様子をみていただけませんか。在宅療養の方で酸素投与が必要にも関わらず、入院のご案内ができていない方が大勢いらっしゃって…」
デスヨネー


【11日目】

フォローアップセンターの調整で、入院待機中の方々のうち一番重症度の高い方が2つ隣の市にある病院で受けていただけることになった。
しかし、ご家族の医療要求レベルが特に高い方が残っていて、何かあったら訴訟問題になりそうな予感。


【13日目】

職員の中に夫婦で当施設に勤務している者がいて、夫氏がA棟勤務、妻氏がB棟勤務。夫氏が発症、陽性者認定され、妻氏は濃厚接触者であるものの夫氏発症当日から別の家(親族宅)で寝起きしていて、妻氏は通常の濃厚接触者待機期間のみで職場復帰できるはずであった。
が、復帰予定日からの数日間、クラスターが発生する前から休み希望を出しており、帰省(他県親族宅)のためにその休みを行使すると言う。
電話連絡して翻意を促すも「もう(帰省先に)来てしまいましたので。戻ったら復帰前検査受けに行きます」。
本日、復帰前検査に妻氏がやって来たが、抗原(定量)陽性。
夫氏とは夫氏発症当日(検査で陽性確定後に発症)、発症前に別行動となり以後一度も会っていない(と本人は主張)とのことなので、これは夫氏とは関係なく、帰省が感染につながった可能性が高い。帰省先では親族集まっての行事もあったようなので、当然飲食も多人数で共にしていて、そちらの方はクラスター発生大丈夫だったのかしらと他人事ながら心配している。
このややこしい時に平常レベルで飲食有りの多人数イベントを普通にやるというあたりが、感染確認数の多い大都市とそうでない地方との温度差なんだろうか。


ここでちょっとモヤっとするのが、たしかに休日を取るのは労働者の権利なのだけど、社会通念上、このような状況であれば自宅待機が明ける際に自分ひとりがこのまままとまった休みを取って勤務繰り上差し支えないかぐらいは確認してくれてもよいのではと思うし、特に感染につながる行動を避けるべき職種であれば多人数飲食を伴うイベントは避けるものだろうし、親戚の側だって妻氏の職業に配慮して「この時期に無理して来なくても良い」ぐらいのことは言ってくれてもいいんじゃないかなー、と。


このあたりから、フォローアップセンターに入院調整をお願いしてあった陽性者が、発症から10日を経過したので行政対応の対象から外れることになり(症状がなければ治癒と見なされる)、入院が必要な状態であれば自分達で転院治療先を探さなければならなくなった。


以前、コロナ対応病床を空けるために、入院後一定期間を過ぎた患者は元いた一般病院や施設に戻せ、患者が元いた病院や施設はゴネないで戻りを受け入れろ、という話があったけれども、戻りどころかそもそも入院できていないし、もう感染力のある時期は過ぎていて別理由での入院でも受け入れてくれる病院がどこにもない。
これで亡くなったりしたら完全に訴訟案件だよなあ。


最終的に全入所者の約3割が感染。
新型コロナ罹患を直接の死因として施設内で亡くなった方はなかったが、転院先で亡くなった方や、軽快して入院先から戻って来られたり施設内療養していた方でも明らかに罹患が原因で体力が落ちて死期を早めたなと思う事例は複数ありました。


もうね、早く経済を正常に回そうと思ったら、みんな罹らないで?
罹りそうな行動しないで?
インフルエンザと違って、症状出る前からウイルス撒き散らしてる可能性あるからね?
現場からは以上です。

新型コロナ感染症クラスター対応をやってみた。(※現在進行形)

Twitterでわたくしの投稿をご覧の方の中には

「近頃あいつ検温結果しか呟かないよなあ」

とお気付きの方もいらっしゃるのではと思いますが、とうとう弊社弊支店にもアレがやってまいりました。

『新型コロナ感染症クラスター』


わたくし自身は感染もせず濃厚接触者にもならず、いわゆる「グリーンゾーン」でクラスター対応事務局的な役割(各種数字の集計と状況把握、行政への報告のための資料まとめ)をしています。
1日の半分は病院薬剤部での仕事もあるので、レッドゾーンで直接患者対応などといった感染リスクの高いことはしないで欲しいということのようですが。

感染の現場に常駐するような過酷さはないものの、それでも曜日関係なく連日出勤で、家に帰ったら遅い晩御飯作って(遅過ぎて相方がマックとか551蓬莱の豚まんとか買っといてくれる日もあった)洗濯して寝るだけで、Twitterやってる場合じゃないよねっていう。

まだクラスター対応は現在進行形ですが、そろそろ次のフェーズに入ってきた感があるので、忘れないうちに自分が見たり経験したり感じたりしたことを簡単にまとめておこうと思います。

※あくまでも「個人の感想」として、経緯や詳細な数値についてはここでは言及しません。


【1】現実は各種マニュアルを軽く越えてくる

感染患者さんは、お行儀良くひとりずつ発生するとは限りません。
リアルの高齢者は、大人しく職員に従う人ばかりではありません。
何なら、知恵も経験もあり認知機能がしっかりしていても、イヤイヤ期の2歳児並みに「嫌なもんは嫌。そんな気分じゃない」とか言い出す、しかもそこへきて体は大人。

病院の感染対策と同じようにいかないのは、設計設備や人員配置以外にも「ケア対象が持つ特性」もあるんじゃないかという気がします。
最近も「2歳児にマスクを付けさせるかどうか」みたいな話ありましたよね。
全員がこちらの指示が通る人ばかりではない。

それを、ハナから「高齢者施設は感染症の知識がない、レベルが低い」みたいに上からモノ言う人が時々いて、正直ちょっとイラッとしてます。


【2】職員が一斉に罹患したら、詰む

世間では「濃厚接触者の自宅待機期間を短くして社会活動を止めないように」という動きが盛んになりましたが

「発症したらそもそも体がツラくて働けない」

というのを皆様お忘れではなかろうか。

濃厚接触者の自宅待機期間を短くしても、実際に罹って体調悪くなった人が大勢出たら、社会活動を止めないも何も、いつもどおりには業務は回せない。

なんでみんな「(自分が)罹らないこと前提」で語るの?
災害訓練とかシミュレーションもそうでしょう。
なんで自分と自分の周囲が無事なこと前提なのか。

そもそも、現場では普段からマスクなど必要なPPE(個人防護具)を付けて業務にあたっているので、正式に濃厚接触者認定された人は子供や配偶者が陽性になった人と、プライベートで感染対策なしの外食を共にした相手の陽性が判明した人の、ごく少数。
濃厚接触者自宅待機による人員減少は、弊支店ではほとんど影響なかったです。


年末年始にかけて

「感染してもほとんどが無症状か鼻水程度の軽症、普通の風邪と同じなので、恐れず社会活動を続けましょう!」

などと煽ったマスコミ、息してますかね?
(当該療養棟の)職員半分が罹患したら、いつもどおりの活動は無理です。
応援を出してもらえばとは言っても、出す方も本来の業務があるし全体が出力を下げざるを得ない。

罹患した職員のうち、2割が10日で回復せず15日後ようやく出勤できる状態でした。
どこが鼻風邪程度なのか。
もう、ホントにマスコミは適当なことを言って広めるのはやめて欲しい。


【3】「毎日全員検査」はあまり意味がないかも

「毎日でも検査して、陽性者を片っ端から隔離していけば感染拡大は抑えられる」

という説を唱える方が時々いらっしゃいますが

「昨日陰性だった人が今日突然発症して、再度検査したら陽性」

という事例を複数経験しまして、検査陰性で安心して無防備無配慮無神経な行動を取っていると、新型コロナは発症前から他へ感染させる能力があるので、次の検査で陽性がわかってもその時には既に他へ感染させているため、そこで隔離しても後の祭りだろうなあと。

検査の試薬やスピッツ、綿棒等資材にも限りがあって、病院の方から「今週受け付けられるのはあと○件」などと制限を付けられることもありました。

だいたい、前にもたぶんTwitterで言いましたけどあの綿棒、病院仕様の検査で鼻に突っ込まれたら、目の下から火花出そうなぐらい痛いよ…(経験談

ネット上では「検査スンナ派とシーヤ派」などと茶化して言う人もいましたが、適時検査はした方がいいけど検査したことで安心して行動が雑になるのなら本末転倒、資材に限りがあるのなら優先順位を付けて高いところからやる、かな。


【4】簡単に入院できない

何か「軽症者も入院させるからベッドが足りないのでは」みたいなコメントをする人を見かけましたが、いつの話をしてるんだという感想。

ざっくり言うとこのあたりでは、1月上旬頃ならいざ知らず、最低でも肺炎起こしてるレベルでないと入院はできないです。

要入院の症例は弊社の関連病院で何人か取ってもらい(うちからの患者だけではないので、それが精一杯)、それでもあぶれた人は府の入院フォローアップセンターにお願いすることになるわけですが、電話はつながらないわ、パ○ナの派遣さんが対応してるのかは知らんけど「保健所に電話しろ」などと頓珍漢なことを言い出すわ、最後は「自宅療養で酸素濃度低下している方にも入院のご案内ができていないので、施設で点滴や酸素投与ができるのであればもう少しそちらで頑張って欲しい」。

発熱や咳、咽頭痛だけ(とは言っても食事が摂れなくなったり、虚弱高齢者には結構深刻)の人は当然のように入院の対象外。

第5波以前の方が、自治体にもよるだろうけど有症陽性の施設入所高齢者は入院できてたのではないか。

運良く入院できたけど、行った先で亡くなられたという事例も経験しましたので、何度も言うけどこれのどこが鼻風邪やねん煽った奴は腹を切らんかいコラ。


【5】薬がない

これもマスコミが散々煽ってくれましたが

「期待の治療薬、モルヌピラビル」

罹患した入所者のご家族に病状説明の連絡をするとほぼ全例聞かれるのが

「あの(テレビでやってる)薬は出してもらえるんでしょうね?」

あれを処方できるのは医療機関だけなので、うちであれを使おうと思ったら病院受診して出してもらうことになるわけですが、そもそも病院にも潤沢に在庫があるわけではないのです。

行政からの割り当てで、1日の発注量に制限があり、それも発注して翌日すぐに届くとは限らない。

当初、施設長(医師)が「職員も含めて、罹患者全員に処方する」と言い出し、いや先生厚労省の通知は読まはりました?だいたい、処方しようとしてもモノがそれだけの数ありませんのよ?全例患者説明して同意書取るんですよ?と全力で止めて、リスクの高い人をセレクトして使ってはみたけれど。

インフルエンザにおけるオセルタミビルほどの切れ味の良さは感じない…
むしろ一部は中等症化して入院…

また新しい治療薬が特例承認されましたけど、あれもインフルエンザでのオセルタミビルほどカジュアルに使えないのに、マスコミが散々「期待の治療薬!」と煽り続けるので、マスコミは適当なことを言って広めるのはやめ(ry


【6】感染状況と普段の仕事ぶりの相関関係

普段から「薬剤師風情の言うことなんか面倒だから聞かない」「お昼休みは楽しくワイワイ言いながら集まってごはん食べたい」という方の療養棟が職員込みで盛大にクラスター発生したので、そういうことです。

黙って飯食えって注意したらちゃんと聞けよ。
まあ、伝達事項を書面にしても読んでない、読めない人もいるみたいだしなあ。


とりあえず備忘録がわりの投稿でした。
続きはまた、いつか。

医療非常事態宣言

大阪府が「医療非常事態宣言」を出す予定なのだそうですが。
まあ、末端の医療機関では、できることをひとつずつ真面目にやるだけなのですけど。
自分のような泡沫書き手があれこれ言ってもあまり意味ないかなあとは思いますが、自分の見ている光景についてひとつふたつ(だけで済まない多分)。

大阪の新型コロナ感染確認者数が東京の数値を抜き始めて少し経ちますが、終息し切る前に飛沫感染を助長するような行動を再び始める人達が散見され、もうみんな細かいことに気配りすることに疲れてしまったんだろうなあと思います。

新型コロナ感染症にかかるのは高齢者だけじゃない。
若年者だから軽く済むとは限らない。
自分で運転して受診に来た人が、診察や検査している間にみるみる容態悪化して、数時間後には挿管されて中等症重症対応施設に送られてしまったり。
解熱して感染扱い解除になっても、味覚が戻らなくなった飲食店主、思うように声が出なくなったアーチスト、以前と同じようには仕事もできなくなったり。

勤務先で陽性患者が出たため濃厚接触者ではないが念のために検査をして陰性だったので安心していたら、2日後に発熱して受診・検査したら陽性だった、最初の念のための検査をすり抜けてしまっていた事例とか。
陰性が出たからと安心して遊びに行って、あちこちで感染広めてたらどうするんだろう、と。

無差別に無症状者の検査をしても、発症前から感染力がある感染症では検査して見つかった段階で既に何人もの人にうつしてしまっているので、見つかってから隔離するのでは効率が悪過ぎる。
それに「無差別検査」で見つかった陽性者を片っ端から隔離していくやり方は、数日から2週間ぐらいの間隔で検査を繰り返していかないとやる意味ないのではないかと思います。

これを大都市の感染拡大地域でガチでやろうとしたら、現状ではたぶん、医療機関や検査機関が死にます。
全国民に毎日検査する程の余裕があるわけではない以上は、症状のある人、濃厚接触者、その他高リスク群を優先して検査し感染者を囲い込む方が圧倒的に効率が良いと思われます。

職場でPCR検査やってるからわかるのですが、一定の精度で検査をやろうと思ったら、検体採取だけを取ってみても、管理が大変なわけですよ。検体の質の管理とか、採取頻度とか。
専用の綿棒を使う採取法、あれ余りに痛過ぎて綿棒突っ込まれた鼻の穴側の、目の下から火花出そうなぐらいの痛さです。

あと、それなりの精度が期待できる検査はコストがかかります。
先日、いわゆる「野良検査」(医師の診察や医療へのアクセスを伴わない簡易検査)で、検体をきちんと検査せず全部「陰性」として結果報告していた、という事案がありましたね。

食中毒予防の原則に食中毒の原因菌を「つけない・ふやさない・へらす」というのがありますが、ウイルスによる感染症予防も「つけない(あちこち触った手で顔や口をさわらない)・ふやさない(ウイルスを体に入れない、飛沫を撒き散らさないようマスク着用)・へらす(うがい・手洗い・アルコール消毒)」ということが言えるのではないかと思います。

守秘義務云々言われて具体的な話は書きにくいのでブログも書かずにいましたが、緊急事態宣言明け以降、それ以前よりも50歳代以下の感染者が目立つなあという印象があるので、若いから大丈夫とは思わずに、うがい手洗い消毒の励行、飛沫を撒き散らさないためにマスクの着用、そして狭い空間で多人数が長時間マスクなしで食べたりしゃべったり歌ったりするイベントは、感染予防の観点から今しばらくお控えいただきますようお願いいたします。

「スポーツファーマシスト」認定取得

2021年4月、JADA(日本アンチ・ドーピング機構)公認「スポーツファーマシスト」認定を取得しました。
各種専門薬剤師認定と比べて取得のハードルが低いので、薬剤師界隈では「誰でも取れるゆるふわ資格」と揶揄されているのは知っていますし、特に職務上必要というわけでもないのですが、とりあえず取りました。

この1年余り、職場では(家庭でも)新型コロナ感染症対応に追われる日々でした。
所属組織では、職員にも(昼夜滞在するタイプの)顧客にも感染者を出さずに何とかやってこられました。

これだけ感染管理頑張ったのに、ただの「消えもの仕事」で済ませてしまうのはもったいない。
「ちょっとペーパー類を調えれば感染制御認定薬剤師取れるのではないか?」と思って、病院薬剤師会のサイトで調べてみたのですが、早々に門前払いに遭ってしまいました。


「感染制御認定薬剤師 認定申請資格(5)申請時において、病院または診療所に勤務し(以下省略)」


他の部分は既に満たしている、あるいは努力次第でどうにかできますが、この部分だけはどうしようもなかった。
自分は、病院での業務も行っていますが、勤務する医療法人内での所属は病院ではないところにあるので、病院から就労証明を出してもらうことができません。

昨年放映されたドラマ「アンサング・シンデレラ」で、救急認定薬剤師資格を目指す薬剤師がドラッグストアから病院に転職するという場面があって、そんな感じでもう少し若ければ転勤や転職という選択肢もありだったかも知れませんが、今の自分の年齢では「専門資格取得(自分の勉強)目的での病院転職」は余程のコネか、他に特殊なスキルでもない限り受け入れてくれる病院はまずないです。管理者とか後進の指導、先にそういうのを期待されるので。
「自分の勉強のためなので、3年間給料最低時給でも、何なら無給でも良いのでこの病院で働かせてください!」と言えるほど、うち、お金持ちでもないですし。

それで、もうそちらは「名より実」でいくことにして、ネットでいろんなページを見ていたら、スポーツファーマシスト認定が、コロナ禍で2020年は認定研修を全てオンラインで実施することになり、申込期限も延長されていたので、そう言えばオリンピック云々でスポーツファーマシスト足りないだの何だので揉めてたなあというのを思い出し、とりあえず申し込んでみることにしたのです。

子供のお友達に、あるオリンピック競技のアンダー世代での日本代表でジュニアオリンピックで金メダル獲ってくるような子がいて、お母様から体に入れるものには気を遣うという話を聞いたりしていたので、うちの子にも友達のそういう飲食物コントロールを邪魔しないようにということを説明するのに役立つかなあと思ったのもあります。
(「体に良いハーブ入り○○」とかサプリメント等、ダメな飲食物ありますので)

あとは、講習もテストも手続も全てオンラインでできるのがよかったです。
現在、個人的な事情で、日曜日の時間が全日自分の自由には使えないため、場所を決めて終日拘束されるタイプの講習は受けるのが困難ということがあり、出かけなくて良いのは助かりました。

4月1日に認定番号を付与され、認定証や必要書類が届くのは来月だそうですが、維持するためには引き続き研修等が必要なものの、とりあえずはスポーツファーマシストになりました。
勤務先の名を背負ってスポーツファーマシストの仕事をすることはたぶんないので、日本アンチ・ドーピング機構のスポーツファーマシスト検索には出てこないようにしています。
オリンピック関係も、スポーツファーマシストとしては今回ご協力するチャンスはないと思います。

あと、今回ぜんっぜん役に立たなかった病院薬剤師会は、今期限りでの退会を検討しています(笑)